十一場




(川越が古地図を手に、
  春子は母親からの手紙を読みながら立っている)
(撤去された石のあとには横断歩道が作られる)

☆春子母からの手紙☆

 
そう言えば、 
あのベロベロバーの不動産屋は
相変わらず調子のいい話を
持って来ているのですか?  
これは私の勘だけど
あの人の言う事もそんなに
悪い話ばかりじゃあないような
気がします。
世の流れに乗ってみるのも
面白かもしれないよ。



(デベロッパーが古いお触書を川越に手渡す)

川越 「痛っーーー!」

春子 「どうしたんですか?
     あら、大きなトゲ。毛抜きを持ってきます」



☆春子母からの手紙☆

 春子は、いつもここから帰る時、
まるで私を
山の上にでも捨てて帰るような
悲しそうな顔をするけれど、
もしかして自分を責めているの?
そうだとしたら大間違いですよ。
大丈夫、
私はここの生活がとても性に
合っているみたい。

川越 「団子屋の土地を売ってくれって話、
    もういいですよ。
    実は父親の認知症が酷くなってきましてね。
    私がもうじき定年退職になるもんで、
    それまではと頑張っていたんですが、
    私一人じゃもうどうにもこうにも・・・。
    ケアマネージャーさんの勧めで
    レインボーハウスに
    しばらく置いてもらう事にしたんですが・・・」

春子 「レインボーハウス?」

川越 「痛っーーー!」

春子 「もう少しで取れますから、
            じっとしててください」

川越 「ホームに連れて行く日の朝の事です」

   ♪行くぞ、と振り向くとそこに 
    埃にまみれたボールと    
    グローブ 抱えた父が立っていた
    あの頃と変わらない優しい笑顔で

川越 「あの日からもうヤケクソですよ・・」

春子 「そのヤケクソであれだけ言ってた 
    最後の大きな仕事も
    もうどうでもよくなったって事ですか?」

川越 「いや、
       そういう訳ではありませんが・・」



☆春子母からの手紙☆

私のひい婆さんのナツさんは65才の時に
家族の反対を押し切ってたい焼きを始めて
お店の危機を救ったそうです。
春子が大石屋を守ろうとしてくれる気持ちは
嬉しいけれど答えは一つじゃないのだから。
何もかも一人で抱え込まないで、
自分の人生を楽しむことも大切にしてね。

春子 「取れましたーーー!」

川越 「ほんとだ!どうもありがとうございます!
     お礼と言っちゃなんですが、
     団子30個、包んでもらえますか?
     父に持って行ってやろうかと。」

春子 「私も、母に会いたくなったので、
    ご一緒させていただこうなぁ?
    レインボーハウス!」

(春子は浮かれた様子でハケ)

川越 「え?! 大石さんの所もですか〜?
    (嬉しそうに) いや、奇遇だなぁ〜〜
    (空を見上げ) あっ! 虹だ!
    (団子屋の方にハケながら)
    大石さ〜ん! 虹ですよ〜! 虹!