五場



(農家のウメとキヨがやって来て、ウメはナツに乳をやる)

キヨ 「おハルちゃん、はよーナッちゃん養子にしてやりな?
    どこの誰かは知らないが、こんな可愛い子を捨てたんだ。
    我が子捨てた母親なんか戻って来やしないよ?」




(大工棟梁の勘吉が
     団子屋の屋根の修理をしながら
                ハルの亡くなった夫の事を思い出す)


♪大工勘吉の歌
   兄(あに)やん・・・見てくれてるか?
   あの日もこんなどんよりした空だった
   ひと雨来る前にと、ワシら大工衆は急いで祭りの櫓を組んでいた 
   その時だった・・
   気づいた時にゃ、兄やんがワシの上にかぶさって材木の下敷きに
   てやんでぇ! べらぼうめ〜! なんでワシでなく兄やんなんだ!
   亭主の名前を呼び続けるおハル姉さんの声
   も一度 叱ってくれよ「勘吉!テメーまともに釘も打てねーのか」
   「おハルの作る握り飯は日本一じゃ」も一度 笑ってくれよ
   てやんでぇ! べらぼうめ〜!





(芸者が町娘2人を連れて登場。
         大工のクマハチが勘吉にお触書の事を伝える)

勘吉 「なんじゃとーーー!姥捨てじゃとーーー?!」

♪大工たちの歌と踊り
   てーへんだ〜 てーへんだ〜 幕府からのお達しだぇ〜
   大石団子の婆さんが 虹架山に捨てられる! 
   おフユ婆さん 捨てられる?
   なんて無情なお触書 時代遅れの姥捨て令〜








キヨ 「なんで大石団子なんだよ?なんでおフユ婆さんなんだよ!?」


(ウメ) ♪この子はここで拾われた 大石団子の婆ちゃん言った
     どんな子も天からもらった宝だと アタイこの子に乳やった

(キヨ) ♪オラのおっかあ乳出んで 
     赤子のオラはフユおばさんの乳飲んで生きた

フユ 「右がおキヨで、左ハル!」

(キヨ&ハル) ♪同じ乳飲んで育った2人 
          血は繋がらねー兄弟さ 乳繋がりの兄弟さ
          うちらの大事なおっかさん もって行かれてたまるもんか!



芸者 「ちょいとあんさん! (クマの首根っこをつかまえて) 
    姥捨てって、大昔の話じゃないか?!
    今の時代にそんなバカな話!
    何かの間違いじゃないんだろうねー!?」

クマ 「あ、あたぼうよ! ちゃんとお触書にそう書いてあったんだぇ!」


(芸者) ♪唄えば笑われ 踊れば蹴られ 十五でモノにならなけりゃ 
      里へ帰れと がなられて行くあてもなく 逃げ出した 
      すきっ腹の目に飛び込んだ店先に並ぶウマそうな団子
      思わず伸ばした手をピシャリ!

フユ 「綺麗な手を汚しちゃいけないよ!
    団子 (左手に持つ) 串 (かんざしを抜いて右手に持ち)あん!」


(フユ) ♪偶然生まれた串団子 今じゃお陰で大繁盛!
                           (はっはっはーと大笑い)

(芸者) ♪手を汚さずに食べられた おかげで今じゃ売れっ子芸者
      あの日から この串団子がアタイのふるさと


  ♪てーへんだ〜

 (全員)  ♪てーへんだ〜 てーへんだ〜 
       幕府からのお達しだぇ〜
       大石団子の婆さんが 虹架山に捨てられる! 
       おフユ婆さん 捨てられる?
       なんて無情なお触書 時代遅れの姥捨て令 
       てーへんだ〜 てーへんだ〜 
       幕府からのお達しだぇ〜








(越後屋登場)


♪人の世の流れに(越後屋)
    昨年の大水で米の出来は半分。
    今年は日照りで野菜が採れん
    入る物がなければ、食いぶちを減らすしかなかろう
    聞くところによると、大石団子の婆さんは昔ほどには団子も作れん
    オマケにたいそう大飯ぐらいだそうですな
    まあ、
    「人の世の流れにそうのも 人の務め、この村の為」
                             だと私は思いますがね
    あ〜こりゃこりゃ・・(立ち去る)


キヨ 「なにをーー!このー!
         (げんこつで追いかけようとして途中でフユに向かって)
    そうじゃ! 飯の量を減らせばよかろう? なぁ? フユおばさん。」

フユ 「飯減らすくらいなら死んだ方がマシじゃ。」



勘吉 「そうだ!婆さん隠そう!」




(全員であちこちにフユ婆さんを隠そうとする)




渡世人 「ごめんなすって!
      それじゃあ 婆さんの尻が丸見えで余計に目立ちますぜ。
      その石、よく見るとちょうどいい凹みがございやす。
      婆さん、ちょいとそこに座っておくんなせー。
      よだれかけはござんせんか?」

ウメ 「ナツのでよければ・・」

渡世人 「あとは皆さん、普段通りに過ごされればよいかと」




ハチ 「うわーーー!石地蔵さんじゃーー」




(立ち去る渡世人に恋をした町娘のミヨ)


♪町娘の恋の歌

(ミヨ) ♪あぁなんて素敵な出会い 
        私の小さな胸が「とーん」と音を立てました
(タマ)  なりません あの方は 町から町へとさすらう旅のお方 実らぬ恋よ
(ミヨ)  あぁなんて苦しい恋心 神様は私に試練をお与えになりました
(タマ)  どうか心 傷つかぬ間に 忘れておしまい 今日1日のかりそめの恋と
(ミヨ)  忘れることなどできましょうか 憂いあふれる眼差し たたずまい
(タマ)  結ばれぬと知りつつ  
(ミヨ)  心ひそかにお慕いします
(2人) いつまでも いつまでも

(2人は、夢見心地の様子で歌いながらハケ)




フユ 「結ばれぬ恋ほど、身も心も燃え上がるものさ」

ハル 「なにそれ? 身に覚えでもあるの?
    そんなことより、
    いつまでもこうして隠れ続けてるわけにはいかないでしょう? 
    お役人さんの所に行って、話だけでも聞いて、
    なんとかならんか、お願いして・・」

フユ  「ワシャどこにも行かん!何が姥捨てじゃ! 
              人を年寄り呼ばわりしよって!」