六場



(トボトボと歩く女の子)

フユ 「お姉ちゃん、名前は?」

イト 「うわぁ! お地蔵さんがしゃべった! 」

フユ 「おイトちゃんか・・おイトちゃんはこれからどこに行きなさる?」

イト 「うん・・と・・虹架山の峠を越えて、三河屋さんのところに奉公に。そこはね・・・」


(キツネの子供達が踊りながら後方に出る)




(キツネ) ♪峠の向こうの三河屋さんにゃ 大きな味噌の樽がある 樽がある

イト 「こーーんなに大きいのがいくつもあるんだって!
   オラはおなごだから店には出られんけど、子守りや洗い場で働くの」


(キツネ) ♪たーんと働いたならば 
         白いまんまを たらふく食わそう たらふく食わそう

イト 「白いまんまって フワフワですご〜く甘いんだって!」

(キツネ) ♪里の暮らしも 助けてやろう 
              家族みんな もう困らん もう困らん

イト 「オラの食いぶちが減ったら爺ちゃんも婆ちゃんも腹いっぱい食えるようになるしね」




フユ 「三河屋さんとこの番頭さんは鬼みたいな人かもしれんで? 怖くないんか?」

イト 「お地蔵さん、誰にも言わない? この前ね、妹や弟たちとかくれんぼして遊んでたの」


(イト)  ♪どこにも行きたくないよ ずっとここに隠れていたい
      暗いのは平気 寒いのも平気 腹が減っても我慢する
      あんな怖い人のところに 行かせるなんて おっとうなんか大嫌い
      でも見たんだ おっとうがじっちゃんに殴られた
      大事な斧を 百姓に売ってしもたと どなられた
      おっとうが胸に抱えていたのものは オラに着せる赤いべべ

(キツネ) ♪赤いべべ着て 見せとくれ 赤いべべ着て 笑うてくれ
       せめてこの 赤いべべ着て 行っとくれ
       イト「それでオラ、もう泣かずに行こうって決めたんだ。」




フユ 「おイトちゃん
     『虹架山を笑って登れば虹がかかる』って言い伝えがあるのを知ってるかい?
    あの山は、笑顔で歩く人には虹をかけて応援してくれるんだ。

イト 「へえ〜! オラも虹、見たいなぁ。」

フユ 「きっと見れるさ。雨が降るかもしれん。(自分の三度笠をイトに被せてやる)
(串団子を渡しながら) これは三河屋に着くまでに食べておしまい。」

イト 「ありがとう!お地蔵さん」