八場




善右衛門 「おフユちゃん?すまない。
       噂を聞いて、いてもたってもおられず・・
       あれからもう五十年以上経ちますね。
       この場所に来たらあの日の事を思い出してしまいました。 
       あの日、私たちは・・」




善右衛門 回想
  ♪石を3度ならす音が聞こえたらそれが合図 
    荷物を持って、出て来ておくれ
    何もかも捨ててこの村を出よう 
    誰も知らない所で 2人だけの暮らしを 始めよう

(若いフユが荷物を持って団子屋から出て来てウロウロ)

♪若いフユ 待ちわびて
   どのくらい待っただろう あなたが迎えに来る時を 
   待ちわびて 待ち焦がれ 待ち疲れ

(石の凹みに座り、ウトウト眠りに)

善右衛門 「私は、傾きかけた店の帳簿をぼんやり眺めながら
       家族が寝静まるのを待っていた。
       けれどその日に限って、
       おふくろはいつまで経っても床に入ろうとせず、
       握り飯まで持ってきて話し込む始末。
       ようやく家を抜け出せたのはもう夜明けに近かった。」



♪若いフユ どんな苦労だって
   どんな苦労も乗り越えられる あなたが側にいれば
   強く温かい腕の中で あなたとの未来を想いえが・・く
(曲が2〜3秒止まり、転調して歌の続き)
   みつけてしまった あなたの袖に付いた 白く光る飯粒
   まだ柔らかく白い塊りを握りしめ あなたの未来想う
   あなたの未来想う あなたのみらい・・おもう

善右衛門 「どこにも行かない・・・あなたは突然言いました。
       なぜ急にそんな事を? 私にはさっぱり解らなかった。
       そして・・こう言いました。 あなたは逃げているだけ!」


(2人) ♪窮屈なお家から うるさい親から 
       うまく行かない仕事から
         そして勝手に決められた縁談から・・・・・



善右衛門 「あれから今日まで、あなたは幸せでしたか?」

(フユがカゴの中から、コンコンコンと叩く)

善右衛門 「そう言えばあの時、
      何があっても二度と会わない、言葉を交わす事もしない。
      若いままの綺麗な想い出にしようと言って別れましたね。
      姥捨て・・・私にあなたの身代わりをさせてもらえませんか?
      あの時、あなたを守りきれなかった。
      一度の人生で、二度もあなたを見捨てる事はしたくないのです。
      3つ数える間にそこから出ないとカゴの中で出会ってしまいますよ!
      そこに私の着物があります。 それを着けて。さあ早く!」